カテゴリ: 藤原緋沙子 の記事一覧

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暖鳥

暖鳥<見届け人秋月伊織事件帖> (講談社文庫)
暖鳥<見届け人秋月伊織事件帖> (講談社文庫)藤原 緋沙子

講談社 2006-12-15
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相変わらず人物描写も事件解決も超あっさり。たぶんずっとこのあっさり味でいくのでしょうね。もう、伊織とお藤を見守ることが、この作品を読む唯一のモチベーションになってしまいました。



内容
秋月伊織は笛の音で女を誘い出そうとする男とそれを阻む老夫の修羅場を目撃した。例幣使に関わるという笛の男を父の敵として追っている足袋屋に会った伊織は、許されざる町人の敵討ちを見届けることになるのか?凍えた心をやさしく溶かす人の情けの温もりに触れる、話題集中の文庫書下ろしシリーズ第3弾。 (「BOOK」データベースより)



実は、前作のお藤と伊織様の恋愛フラグから、続きが気になってしょうがなかったので、すぐに買って読んだ三作目。ちゃっかり踊らされている読者です。

さて、あっさり主人公の伊織ですが、前作同様、一話ごとに心理描写の量が増えています。ただし相変わらずの焦らしプレイ。まるでクラスや部活に必ずいた、こっちから近づいても必ず距離を置いてくる人見知りする子を見ている気分。それでも、三作目になり情がわいたのか、そんな引っ込み思案な子が徐々に心情を露吐するようになって、「ああ、やっと心を開いてくれたんだ!」という嬉しさみたいなものを感じてしまいます。

一話目の「父の一分」は、背中で語る父、それをしっかりと受け止める子という素晴らしいテーマでした。じんわり熱く、そして爽快なラスト。事件そのものは単純ですが、展開が気になって先へ先へと読み進めてしまいました。

二話目の「鶴と亀」は、これは江戸の文化紹介のような事件。実際に「湯屋」で流行った「板間稼ぎ」を、伊織たちが探し出し、諭して事件解決。ちょっと単純すぎた。貧乏なうえ、ついてない。そしてちょっと魔が差した。その犯行動機も浅すぎて、ちょっとすっきりしませんでした。

三話目は表題作「暖鳥」
このタイトルの「暖鳥」は、大辞林には「温め鳥」で出ていました。

1 冬の寒い夜、鷹(たか)が小鳥を捕らえてつかみ、足をあたためること。また、その小鳥。翌朝その小鳥を放し、その飛び去った方向へその日は行かないという。(大辞林より引用)

俳句の季語でもあり、季節はもちろん冬。
その暖鳥と、父の仇を探しながら廻り足袋売りをしている宇市、そのかつての許嫁おふさのエピソードがとてもいい。それで、いつこの「暖鳥エピソード」が生きてくるのかと思いきや、それはもう唐突に、言葉だけが使われてしまった感じがしました。いつも以上に複雑な事件でちょっとわくわくしたのに、それがあっさり解決してしまったものだから、なんか拍子抜けしたこともあって、惜しい。

そして勝手に注目している伊織とお藤。
なぜかここにきて、なぜかお藤の影が薄い。顔を出す回数は少なくないし、伊織様との絡みも全話にあるし、せっかくの女性ライバルも登場したのに、「あれ?嫉妬?」程度の描写しか無く、そのライバルになり得るはずだった女性もあっさり姿を消してしまって…。前作からの期待が大きすぎたのか、個人的には完全燃焼。吉蔵のお酒に釘を刺すだけの役に成り下がってしまうのかと心配です。
まあ、伊織の心理描写がそうだったように、この二人も、ゆっくりゆっくり距離を縮めていくのかもしれません。長屋に住み始めたから一気にお藤が押し掛け女房になったりするよりも、このペースの方が、昔の中高生みたいで清々しいのかも。

面白くないといいながら、伊織とお藤がどうなるのかだけが気になって、次作も買ってしまう予感がします。


春疾風

春疾風 見届け人秋月伊織事件帖 (講談社文庫)
春疾風 見届け人秋月伊織事件帖 (講談社文庫)藤原 緋沙子

講談社 2006-03-15
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フラグが立った!フラグが立ったよ!!
前作より心理描写が増えて、本当に少しずつですが、体温を感じられるようになった主人公・伊織。
この調子で、だるま屋メンバーや事件当事者の人物像にもっと深みが出たら、きっと面白いシリーズになるのになぁ。(Kerog*)




内容
市井の噂話から千代田のお城の秘密まで。硬軟とりまぜた事件の顛末を情報として商っている「だるま屋」の秋月伊織は、関所を破って江戸に入った女のその後を調べるため、岡場所へ向かった。苦界に生きる女の矜恃と、思いもよらぬ大事とは?心に迫る表題作他4編、人気沸騰の文庫書下ろしシリーズ第2弾。(「BOOK」データベースより)





相変わらずさくっと読めるけど印象が薄いのが残念。何となく読み捨ててしまいます。練ったストーリーも、短編だから詰め込みすぎな感じが拭えません。ただ、前作に続き、一話ごとのタイトルは音読しても美しいですね。

そして、紅一点のお藤と主人公の伊織。
今回、やっと恋愛フラグが立った!
2話の薄氷で、お藤に惚れている(というよりストーカー)金之助が登場。この金之助の登場でいろいろあって、伊織もなんとなく自分のお藤への気持ちに気付く。ついでに達磨屋に奉公している子供の文七にまで諭される。どこまでもうとい伊織。でも、よく考えると、次男坊とはいえ武家の伊織と町人のお藤では身分の差があるし、前途多難だな。この二人。と、思っていると、この身分の差をなんとかしてしまう展開が!これは上手い(笑)次作で急進展もありかもしれません。

と、そんな事ばっかりに注目してしまうのは、やっぱり本筋が面白味に欠けているということかもしれません。



各話あらすじ

寒紅
「しくしく泣く地蔵がいる」というはなしを達磨屋に売りに来たお波という女。話は決して金で買わないという信念のある吉蔵が断ると、お波はどうしても金がいるのだという。吉蔵に頼まれた伊織がお波を訪ねると、お波が寒紅を盗んだと疑われているところを救ってくれた侍が、客からの預かり金を無くして困っているので、今度は自分が助けたいのだという。その侍のことを気にかけながらも、泣く地蔵のはなしを見届けることになった伊織。実は、その地蔵の正体は…

薄氷
寺の墓地で凍死していた男は、越後屋という酒屋を営んでいた喜助という男だった。一方で達磨屋では、三度も火をつけられた伊勢屋という酒屋を調べることになった。その後、実は凍死した喜助の越後屋は、伊勢屋の悪どい手で潰されたも同然だったことが分かる。その経緯から、火付けの下手人は越後屋の手代、与之介ではないかと目星がつく。

悲恋桜
桜見物で賑わう隅田川の堤にお藤とやって来た伊織。そこで二人は男が斬られるのを目撃する。斬られたのは三年前に重追放になっている浅五郎という男だった。達磨屋で浅五郎について調べると、三年前に同じ場所で、旗本長田兵吉とその妻女、母、下女にちょっかいを出し乱暴を働いた旗本真野鉄太郎の仲間だった。その事件を調べている最中、伊織は剣の稽古をしている男に出逢う。

春疾風
達磨屋の仕事で岡場所に聞き込みにいった伊織は、岡場所の男達に暴行を受けている畳職人の伍助に出逢う。なんでも伍助はおちよという許嫁が岡場所にいると聞いて突きに何度も探しに来ているのだという。また、伍助をかばっていた気風のいいおふくに達磨屋の聞き込みを協力してもらうことになった。その帰り、抜刀した武士ににじり寄られている農民に出会い、助けに入るも一人が斬られて事切れる。その死んだ百姓の旅仕度から、どうやら越訴であったことが伺える。その数日後、おふくから伍助の探しているおちよが見つかったとの連絡が入る。



遠花火

遠花火―見届け人秋月伊織事件帖
遠花火―見届け人秋月伊織事件帖藤原 緋沙子

講談社 2005-07
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見届け人という面白い設定ですが、あっさり薄味な印象の作品。今後、いろいろと色を付けてくれそうな、紅一点のお藤に期待してみる。(Kerog*)



内容
「八歳の女子が赤子を生んだ」「他人の墓石を勝手に磨いて回る何者かが出現」江戸旅篭町の古本屋「だるま屋」には公儀の裏事情から町の噂まで、さまざまな風聞が集まる。噂の出所や行く末を追って秋月伊織が“見届ける”抜き差しならない男女の通い合い、心に響く親子の情愛。人情あふれる書下ろし時代小説新シリーズ。(「BOOK」データベースより)





旗本の次男、兄は大目付という秋月伊織の人物設定に、どこか聞き覚えがあったのですが、読んでいて、藤沢周平「よろづや平四郎活人剣」の平四郎、平岩弓枝「御宿かわせみ」の東吾とどこか似た立場。

こちらの伊織様は、妾腹でなく本妻の子でお住まいはお屋敷。時折、嫂や兄のお供や使いをしながら、生業としてではなくアルバイトのように見届け人などやっているというわけです。また、性格も淡白な印象で、浮いたはなし一つありません。

時代物の定番でもあるように、剣の腕がたち、着流し姿でも「たとえようのない色気」があり、女たちの中には「憧憬の目で振り返る」ものもいる、ヒーローらしい人物像です。そんな人物なのに、繰り返し描写していないから鼻につくようないやらしさはありません。いや、それどころか、とにかく印象に残らない主人公なんです。

見届け人という設定は面白いし、彼らが請け負う事件・ウワサもそれなりに凝っているのですが、伊織たちが大活躍!というわけでもなく、いやにあっさり解決してしまったり、主人公・伊織をはじめ、吉蔵、土屋弦之助、長吉、お藤など主要メンバーの人物描写が少なく、台詞や行動に「らしさ」がありません。それに輪をかけて事件の当事者に関しても書き込みが浅いため、感情移入はもちろん、余韻も残らないのです。どこか粘っこい部分があったり、キャラクターを作り込むか、事件そのものに情感があれば、もっと面白いのになぁ。と、思います。

それでもそのあっさり感は、読みやすさに繋がっていると思うので、さくさく読むためのシリーズとしてはおすすめ。次に期待してみたいと思います。

「遠花火」
鉄砲武具店の近江屋に、西山藩の狭山五郎蔵と柏木七十郎が水戸家御拝領の鉄砲を筒掃除のため預けにきた。後日、七十郎が一人で鉄砲を受け取りにきて、そのまま行方しれずになっているという。鉄砲も戻っておらず、その行方をだるま屋が見届けることになった。痘痕が目立つ七十郎の人相を知って、以前ひょんなことから口をきいた男を思い出す伊織。その男は、梅屋敷の夜の梅を、白い扇子に書くような風流な男だった。

「麦笛」

「草を摘む人」

「夕顔」




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